上野東京ライン、詳細発表を受けて考えてみる

【11月3日、内容を一部見直して再投稿しました】


10月30日、JR東日本より、上野東京ラインに関する発表がありました。

資料1:http://www.jreast.co.jp/press/2014/20141022.pdf
資料2:http://www.jreast.co.jp/press/2014/20141021.pdf


 【資料1】では、宇都宮線高崎線常磐線の運行形態について、以下のように述べられています(平日)。






 これを見た限りでは、宇都宮線高崎線がどの程度東海道線と直通運転するか分かりませんが、常磐線系統については、おおよそ実態が見えてきます。
 朝ピーク時間帯の直通本数については、各線不平等なくといったところでしょうか。ただ、中距離電車と特急の乗り入れ無しとなると、恩恵を受ける範囲は限られそうです。


常磐系統について】
 まず大元として、常磐系統の上野東京ライン乗り入れは、朝8時頃に東京に着く列車からとなるようです。
 その便を皮切りに、9時頃までのピーク時は常磐快速のみが5本。
 それ以降日中は、中距離電車の一部のみの乗り入れ。
 夕夜間帯は再び快速のみで、本数は明記されていません。
 特急列車については、朝の乗り入れ無し。日中は全列車が乗り入れ。夕夜間帯は一部のみ乗り入れるようです。


【宇都宮・高崎系統】
 こちらは終日乗り入れるようです。
 朝8時頃から9時頃までに東京駅に着く列車は5本ずつ。
 それ以外の時間帯に関しては、乗り入れ本数は明記されていません。
 また、特急列車についても、記載はありません。


【今後の発表で明らかになるであろう事項】
 ・宇都宮・高崎線は、どの程度の列車が東海道線に直通するのか。
 ・あかぎ、草津、臨時特急は直通するのか。
 ・夜行列車の扱いはどうなるのか(従来通りの発着だろうが)。
 ・常磐線の、日中乗り入れる中距離電車はどの程度なのか。
 ・夕夜間帯の常磐特急はどの程度乗り入れるのか。
 


 さて、実は上野東京ラインより私が注目したのが、【資料2】の方。そこには、新しくなる常磐特急についてまとめられています。


【内容抜粋】
 1.列車名を「ひたち」「ときわ」に変更。
 2.運転区間を品川まで延長。
 3.新たな着席サービスの開始。
 4.上記に伴い、自由席車両の廃止。
 5.特急料金の一新。


・(1)について
 これまでの常磐特急は、速達タイプの「スーパーひたち」と急行的立ち位置の「フレッシュひたち」に分かれていましたが、前者が「ひたち」、後者が「ときわ」に改名されます。
 そもそも485系との区別のために「スーパー」を名乗り、653系の登場で「フレッシュ」が登場したものの、657系に統一された今、改名は当然と言えば当然の流れです。
 この「ときわ」と言う列車名は、元を辿ると1955年に運転を開始した快速列車が始まりです。この列車、3年後の1958年には準急に昇格、さらに1966年に急行に昇格。常磐線を約20年走り続け、1985年に特急「ひたち」の統合される形で名称が消滅しました。それ以来、実に30年ぶりの名称復活となります。
 停車駅に大きな変化は無いと思われるので、これは歓迎されるべき変更でしょう。


・(2)について
 上野東京ライン関係で紹介した通り、常磐特急の一部列車が品川発着となります。
 ただ、日中こそ全列車が品川発着になるものの、夕夜間帯、いわゆる帰宅時間帯は一部のみ、朝に至ってはこれまで通り上野発着。通勤利用者への恩恵は少ないようです。


・(3)(4)(5)について
 一番言いたいのはこれら。新たな特急利用システムとも呼ぶべき制度。


 「ひたち」「ときわ」とも、実質全席指定席となり、指定席券が無いと確実に座れない事態に。
 ただ、新たに設定される「座席未指定券」を購入することで、指定を取らなくても、列車の空いている座席に着席できるようです。
 この「座席未指定券」とは、乗車日と区間のみを指定した(乗車列車は指定しない)特急券で、料金は指定席券と同額です。
 その料金についても、JR東日本いわく「シンプルで分かりやすい」体系に変更され、指定席券については値下げされます。


 以上のように、内容自体は、「スワローあかぎ」に準じたものとなるようです。

 スワローとの変更点として、列車の座席上に、ちょうど普通列車グリーン車のような発券ランプが装備されました。これは、どの区間で座席利用者がいるのか、またどの駅から指定券所持者が乗車してくるのかを示す役割を果たすようです。
 これにより、座席未指定券で着席している場合でも、いつ自分の席の指定券所持者が乗車してくるのか、分かりやすくなります。


 しかし、常磐特急はスワローと違って長距離を走ります。長距離を走る=区間利用者が多い。と、言うことは。

 例えば、いわきから上野まで、「フレッシュひたち20号(現行ダイヤ・改正後は ひたちに統合か)」に、座席未指定券で乗車したとします。
 座席に腰を下ろしても、その席の指定券を持った乗客が来たらどかなければいけないので、ランプを気にしながらの移動です。
 では、どの程度気にしていなければならないかと言うと……。


  07:27 いわき発
   ↓
  07:33 湯本
   ↓
  07:38 泉
   ↓
  07:44 植田
   ↓
  08:00 高萩
   ↓
  08:05 十王
   ↓
  08:13 日立
   ↓
  08:17 常陸多賀
   ↓
  08:21 大甕
   ↓
  08:31 勝田
   ↓
  08:36 水戸
   ↓
  08:48 友部
   ↓
  08:59 石岡
   ↓
  09:09 土浦
   ↓
  09:18 牛久
   ↓
  09:23 佐貫
   ↓
  09:36 柏
   ↓
  09:59 上野着


 実に16回。柏に着くまで5分〜15分毎に停車駅があるため、その都度、16回もランプを確認する必要があるのです。これでは うたた寝も出来ませんし、呑気に駅弁を広げることさえ躊躇います。
 いざ柏を発車しても、終点まで20分程度。高い特急券を購入して、寛げるのはたった20分です。

 速達列車ならもう少しマシにはなりますが、予め窓口で指定を確保しなければ、これまで通り寛ぐことが出来なくなってしまいます。


 そして、色々と問題なのは料金体勢です。

【従来の指定席料金と、新たな指定席料金】

 指定席は問題ありません。ガッツリ値下げされています。

 特に、資料通りの解釈をすれば、勝田から先のA特急料金も見直されることになるので、都心発で勝田より先、大甕までの、従来A特急料金150km区間に関しては、繁忙期だと1,000円もの値下げになります。
 また、各種割引サービスを利用すれば、さらに安くなることが分かっており、これまで指定席を利用していた人にとって万々歳の改定です。

 さらに、資料通りの解釈で考えるとすると、分割購入で安くなる場合も。
 例えば上野から勿来までは200km区間ですが、上野〜石岡(100km区間)+石岡〜勿来(100km区間)と購入した方が、200円安くなります。これは通用するのでしょうか……?


【従来の自由席料金と、座席未指定券料金(=新たな指定席料金)および車内料金】

 そもそも自由席の概念を廃止したことで、一部を除き、値上げされました。

 そしてなんと、首都圏近郊列車のグリーン車のように、車内料金が設定されました。
 これが曲者で、仮に特急券を持たないで乗車してしまった場合、最大で500円の値上げとなってしまいます。


 正直言うと、この“車内料金”だけはやってはいけないと思います。
 「スワローあかぎ」はスワローサービスと名乗っていたのでまだ理解できましたが、普通の特急列車に導入してしまうのは如何なものでしょう。
 勿論、新制度の導入により、車内改札が省略され、移住性向上のほか、車掌の業務負担を軽減する役割も果たしていると思います。
 しかし、だからと言って車内料金は……。


 これまでのように、気軽に特急列車に乗るような場面は、少なくなるのではないでしょうか。
 これがホーム上で指定席券を購入できるならいいのですが、そうでなかった場合、わざわざ改札に入る前に窓口や券売機に並んで購入することとなり、不便極まりない……。
 きちんと周知しなければ、料金に関してトラブルに繋がりかねません。


 車内料金に限らず、近距離利用も敬遠されるのではないでしょうか。特に50km以内でも750円というのは、簡単に出せる金額ではありません。
 特急券を持たずに急いで飛び乗った場合、50km以内で1,010円です。普通列車グリーン車のように、結構ですと言って普通車に逃げることもできません。それこそ乗ったら最後です。


 「ひたち」は、1972年にエル特急に指定されました。自由席を繋いで利用しやすい特急、それがエル特急ですが、この新制度の前には、そんな面影は微塵も感じられません。
 得をするのは、予め指定席券を購入できる、時間に余裕のある人だけです……。


 と、ここまで書きましたが、私は常磐特急ユーザーではありません。
 では何故ここまで危惧しているのかと言うと、“この新制度が別線区に導入される恐れがある”からです。
 もちろん、正式な発表なんて出ていませんが、効率化の観点からすると、この新制度の範囲が広がっても、何らおかしくないのです。


 特に、中央本線、「あずさ」系統。
 元エル特急、B特急料金区間、帰宅ラッシュ時も運行……常磐特急と性質が似ている中央特急。
 しかも、新車の導入予定がある。
 ……もしかすると、その悪夢は現実のものになるかもしれません。
 通勤ライナーや臨時特急が数多く走るので、可能性は低いかもしれませんが……、ホームライナーをスワロー特急に置き換えた前科があるため、安心はできませんね。


 特急列車の新制度。
 料金設定もそれなりの理由があっての改変だとは思いますし、実際に指定席は大幅値下げしています。
 ……が、明らかな指定席券購入への誘導を見るに、“気軽さ”が失われてしまったことは、残念でなりません。
 そして、座席を指定しなければ、寛げる時間さえ、取り除かれてしまうのです。


 こんな特急列車、果たして受け入れられるのでしょうか。
 それは運転が開始されなければ分かりませんが、定着さえすれば便利なものになるでしょうし、あまり良い声が上がらないのであれば、流石に再改変するでしょう。


 上野東京ラインの開業に加え、北陸新幹線も金沢まで開通する、2015年3月のダイヤ改正
 良い面もあれば、どうしても悪い面も見えてしまうのは仕方のないことだと考え、大きく変わるその日を、楽しみに待つこととしましょう。