鉄道ファンの暴走

 もうご存知の方も多いかと思われますが、鉄道ファンとして“最低”な行為に走った者が現れました。


 【 http://hamusoku.com/archives/8691938.html
 ※ リンク先は、“ハムスター速報”様の当該記事。


 その人間が何をやっているか、何のためにやっているか、コアな鉄道ファンの方なら一目瞭然でしょう。


 タイフォンを接着剤のようなもので固定している――。


 これだけでは分かりにくいかと思いますので説明すると……
 古い電車には、“タイフォン”という機構が先頭に付いていて、それは何かというと、“警笛を鳴らす”ためのものです。
 タイフォンには蓋があって、普段は【写真1】のように閉じていますが、警笛を鳴らすと、【写真2】のように、蓋が空いて警笛が鳴る仕組みです(イメージ)。

 【写真1】↓


 【写真2】↓


 それを接着するとどうなるか――。
 小学生でも分かりますよね。警笛が鳴らなくなります。


 では何故、この人間は、そんなことをしたのでしょうか。

 これも簡単な話で、“蓋が空いていると写真写りが悪いから”です。

 タイフォンを装備している列車は古いものが多く、通常、警笛を鳴らし終えたら閉まるはずの蓋が、空いたままになるケースがあるのです。片側のみ閉まらない、というケースが多いように感じます。
 【写真3】は、そんな“片側のみ蓋が閉まらないタイフォン”のイメージです。……写真写り、悪いと言えば悪いですね。

 【写真3】↓



 要するにこの人間は、

 写真写りが悪いことが許せない! → なら最初から開かないようにしてやれ! 

 と言う、小学生でも思いつかないような幼稚かつ短絡的な衝動で、タイフォンの接着に踏み切ったのだろうと思われます。


 では何故、その人間は、この列車にそのような行為をしたのでしょうか。

 それは、この車両の処遇が怪しいからです。

 まず、郡山〜会津若松を主に運行している「あいづライナー」と言う列車があり、同列車は、3月のダイヤ改正で、運行終了がアナウンスされています。
 次に、この「あいづライナー」ですが、通常は、白とオレンジの車両が使われていて、その車両が検査等で工場に送られている期間のみ、写真の車両が登場します。
 希少価値に希少価値が重なった列車、と言う訳です。


 要するにこの人間は、

 貴重な国鉄車両が希少な列車に入る → けど写真写りが悪いことが許せない! → なら最初から開かないようにしてやれ!

 と言う、全くもって意味不明で自己中心的な衝動で、今回の行為に踏み切ったのでしょう。


 私には理解できません。

 電車にも、“警笛鳴らせ”の標識があります。見通しが悪い場所などで、列車の接近を知らせるための標識です。
 もしこの人間の行為によって警笛が鳴らなくなった場合、列車は安全な運行が出来なくなってしまいます。

 その人間のTwitterを見ると、反省する様子も無ければ、これから“手術します”(タイフォンを固定する意)と書き込んでいるなど、幼稚を通り越して人間性を疑うような反応をしていることが分かります。反吐が出る行為です。

 きっと、鉄道のことを考えるあまり、物事の善悪を考えられない、残念な成長を遂げてしまったんだと思います。

 果たして完全に接着されてしまったのかは分かりませんが(そもそもこんな馬鹿なこと前例が無いので)、万が一、警笛が鳴らないがために事故が発生してしまったら、と思うとゾッとします。

 万が一ですが事故が起こってしまった場合、「往来危険罪」(鉄道若しくはその標識を破壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせる行為 ※)の適応だと、2年以上の懲役が課せられます。
 また、「汽車電車転覆罪」(人の乗る汽車又は電車を転覆させ、又は破壊する行為 ※)の適応だと、無期懲役か3年以上の懲役が課せられ、死亡事故につながった場合、死刑か無期懲役となります。
 ※ ともにWikipediaから引用。


 後者に問われることは無いかと思いますが、万が一、警笛が鳴らなかったことにより、線路を横断している人が列車の接近に気付かず、人身事故になってしまった……。と言うことも、可能性として、考えられなくはありません。


 同じ趣味を持つ者として、良い写真を撮りたいと言う気持ちは分かります。
 しかしそれは、好条件が重なった奇跡として、“偶然”達成できるからこそ、喜べるのではないでしょうか。撮影場所を調べ、車両運用を調べ、当日の天気、突如湧く雲に冷や汗かきながら、良い写真をモノにする――。それが、鉄道写真を撮ることの醍醐味ではないでしょうか。

 昨今、鉄道ファンのマナーが問題視されている中、こういった、車両に危害を与える行為に走るこの人間が何を考えているのか、私には到底理解できませんし、理解しようとも思いません。
 馬鹿が馬鹿なことを考えるのは勝手ですが、それを実行に移すのは本物の馬鹿であって、酌量の余地すらありません。


 良い写真を撮れるように自分が行動に出た! とヒーロー気取りなのかもしれませんが、タイフォンが開かない=不具合であって、車両交換されてしまっては、そもそも写真を撮れません。
 そういったことまで考えての行動だったのでしょうか。いや、そこまで考えられるような人間では無いでしょう。


 鉄道の撮影には、最低限のマナーがあります。
 一般利用者に迷惑をかけないこと。車両や設備を破壊しないこと。架線柱(または境界点)の内側に入らないこと。
 鉄道写真趣味は、鉄道会社の収益に全く貢献しない、もはや鉄道会社の善意によって成り立っていると言っても過言では無いことを、我々はもっと理解すべきです。


 活躍の場が狭まっていく貴重な国鉄車両に対し、自己中心的な理由で危害を加え、結果、多くの人に迷惑をかけるかもしれない今回の行為。
 とても許せるようなものではなく、怒りが込み上げてきたので、今回記事として執筆させて頂きました。


【 追記 】

 ニュースでも取り上げられ、どうやら刑事告訴も検討されているようです。

 【 http://www.j-cast.com/2015/01/26226214.html
  列車の警笛装置のカバーを接着剤で塞ぐ、トンデモ「撮り鉄」にJR東日本刑事告訴も検討」。J-CASTニュースより。


 身から出た錆、と言いますか、こういう人間を、“自業自得”と言うのでしょうね。