SLおいでよ銚子号! 気合のチャリ追っかけ!

 2009年、2012年。千葉でのSL追っかけにレンタサイクルを利用して、いずれもちゃっかり成功している。
 この時は偶然レンタサイクルを見つけたからできたことで、レンチャリ屋が無かった場合、あっても時間や値段で効率が悪い場合などは、断念せざるを得なかった。


 だったら自転車を“買ってしまおう”という発想に辿り着くまで、そう時間はかからなかった。


 買うのなら、輪行(折りたたんで持ち運ぶ)できるロードバイクが良い。しかし、それ相応の値段はする。どうすべきか・・・。


 そんな中、2012年のSL追っかけに友人のK君を誘ったのだが、なんと彼、自宅のある池袋からロードバイクで参戦したのだ。
 彼の行きつけの店で、とあるロードバイクを特価で販売していると聞き、熟考の末、それの購入に踏み切った。
 ※たぶん2週間くらい考えた。どのデザインにするかで相当悩んだ。


 そして迎えた2013年2月。佐原〜銚子間で運転の、SLおいでよ銚子号。この追っかけが、自分のロードバイクデビューとなった。


【2月9日(土)】
 前日に小田原に友人を呼びよせ、早朝5時半過ぎに、小田原を出発する。
 今回の作戦は、ロードバイクの慣らし走行を兼ねて小田原→鎌倉まで走行。輪行し、佐原まで列車で移動、自転車を組み立て、佐原から撮影地まで再び走る、撮ったら恒例の追っかけ、というものだ。

 ・・・とまぁ、計画だけは簡単にできるもので、実際は悲惨だった。

ロードに慣れていないということもあり、想像以上に疲れる。何度も休憩を挟み、鎌倉から乗車予定の列車をずらし、それでも間に合いそうになく、急遽、鎌倉高校前駅から江ノ電を利用するまでに。これは早く慣れないとマズい。

 鎌倉で自転車を担いで2分乗換と言う荒業を成し、一気に千葉まで移動。房総の209系に初乗車し、小見川で下車。時間が掛かり過ぎたせいで、この列車の後に来るのがSLと言う状況。予定していた撮影地はパスし、車窓から判断した、駅近くの踏切へと向かう。

 バックに陸橋が映ってしまうが、順光かつ、線路わきにロープが貼られていないという好条件。先客は数人しかおらず、千葉で買った駅弁を食べながら、のんびりと通過まで待機。

 通過10分くらい前からギャラリーが増え始め、線路脇ではしゃぐ子供もちらほら。

 そのうち遠くから汽笛が聞こえ、約1年ぶりに、C61-20と対面した。
 旧客6連を従えて、黒煙を勢いよく吐き・・・勢いよく・・・アレ?

 この先がカーブだったからか、切り位置付近で煙が止まった。


 さて、ここからがロードバイクの本領発揮。
 急いで荷物を片付け、目指すは下総橘駅先の撮影ポイント。SLは笹川駅で長時間停車があるため、“理論上は”余裕で間に合うことが出来る。

 ただ、信号や交通渋滞、自分の疲労や先客への配慮等、危なっかしい要因は多数ある。とにかくひたすら一目散に、撮影ポイントへと向かった。

 片道一車線の道路は、想像以上に走りにくい。渋滞で路肩は狭まるし、道路脇の白線には居眠り防止っぽい凸凹が付いているし、相変わらず疲れるしで、時間的に厳しくなる。

 ・・・と思いきや、上総橘の撮影ポイントには、SL通過の10分以上前には到着。急いで場所を考えれば、すぐそこまで聞こえてくる汽笛。

 青空、順光、黒煙、どれを取っても問題なし!

 この後、犬吠埼まで自転車で移動し、今宵の宿、“ペンション・ヘルシーウイング”に20時頃到着。
 ここのペンションの良いところは、部屋単位で定額制と言うこと。この時は、アスレチックのような屋根裏が特徴的な8人部屋に、四千円台で宿泊できた。設備面では普通のビジネスホテルとそう変わらずに、この広さでこの値段は安い。

 近隣の食事処で夕食を取ろうと思いきや、軒並み20時閉店と言う驚愕の事実。仕方ないのでコンビニで夕食を調達し、翌日の追っかけのため、早々に床に就いた。



【2月10日(日)】
 基本的に、DL牽引は捨てるスタンスでいるため、午前中はペンション周辺を探索。君ヶ浜しおさい公園と言うのがあり、海と緑が美しいその海岸線を、しばしサイクリング。

 そのまま向かった先は、“地球の丸く見える丘展望館”。その名の通り、地球が丸く見えると有名な、犬吠埼にある展望館だ。場所的には、外川駅から自転車で10分程度。
 この日も天気が良く、青い海と青い空、水平線が織り成す光景は、なかなかのものだった。
 館内では、調子名物ぬれ煎餅が焼かれており、これは喰わねばと1枚ずつ購入。焼いてたおじいちゃんに小田原から来たことを告げると、この先も頑張ってと1枚おまけしてくれた!
 焼きたてのぬれ煎餅。甘辛い醤油に、パリっとした海苔が絶妙にマッチ。美味しく頂きました。




 外川駅から輪行し、銚子電鉄に乗り込む。元京王車の京王カラー。途中の車庫で丸ノ内線と銀座線の旧型車を発見し、見たこと無いけど懐かしむ。
 銚子でJRに乗り換え、前日と同じく、小見川で下車。ただ今度は別の撮影地に向かう。

 とにかく沿線にロープが張られていないことを優先条件とし、かつ順光、背景が煩くない場所を探したため、必然的に、構図は似たり寄ったりになってしまう。

 ここから再度追っかけ。追っかけ先は、時間的焦りを出さないため、前日と同じ場所に設定。相変わらず渋滞が激しく、その分自転車も進みにくい。

 1か所目にいた車の撮影者の一部もこのポイントを目指していたらしく、到着時間は大差なし。最大の悩みどころである駐車スペースや、渋滞で間に合わない時の対応を考えれば、自転車の方が有利だと感じた。

 と、前日とそう変わり映えのしない(むしろ悪化してる可能性も・・・)感じでシャッターを切ったところ、汽笛が短く連打される。そして微かに聞こえた弾ける音。あぁ、これは止まるな。

 予想的中、SLは緊急停車。どう考えても線路内立ち入りか、直前横断か。撮影者には“列車を止めない”と言う最低限のマナーは守ってほしいものだ。

 これにてSLの撮影は終了。犬吠に戻るがてら、スーパーの前の軽トラ屋台でお好み焼きを購入。近くの雑木林らしきところに入り、遅めの昼食を取った。


 ペンションに戻ったのは19時少し前。今度は現地の食事処で夕飯を食べようと、早々にペンションを出発。向かった先は、前日目星をつけておいた、“さかな料理島武”。
 マグロや金目の刺身をつまみに地酒で乾杯。煮付け、天ぷら、刺身とボリュームたっぷりの定食に舌鼓。旅はやっぱりこうでないと!



【2月11日(月)】
 この日はSLを撮影せず、完全に観光プラン。
 途中の踏切で銚子電鉄を撮影し、まず向かったのは、犬吠埼灯台。真っ青に澄んだ空を見上げる、真っ白な灯台。筋肉痛を起こしている足に鞭入れ、螺旋階段をひたすら登れば、灯台から望む穏やかな海の景色・・・は、風が強すぎて早々に撤退した。





 隣接する小さな資料館も見学し、お土産屋でぬれ煎餅を購入、再び自転車に跨り、海沿いの道をサイクリング。天気が良くて、本当に気持ちが良い。

 辿り着いたのは、“ウォッセ21”という水産市場。多くの店が軒を連ね、威勢のいい掛け声で呼び込みをしている。
 昼食はここのレストランで。ちょうど昼時だったのでどの店も混んでいたが、そこは我慢。ここで注文したのは、ウニ、イクラ、ネギトロが ふんだんに盛られた海鮮丼。アナゴの天ぷらも注文し、旅の最後を飾る豪華な昼食を楽しんだ。

 隣接する“銚子ポートタワー”も見物し、銚子駅へと自転車を進める。駅近くでお土産を購入し、特急しおさい14号で帰路に就いた。




 今回、初めてのロードバイク旅となったが、とにかく楽しかった!
 疲労は相当なものだが、天気も良し、SLも良し、美味しいものも食べれて、満足度はかなり高い。

 今後も機会があれば、追っかけではなくサイクリングとして、ロードバイクの旅をしたいものだ。

 ・・・この日の体験が、自分をとある“大きな挑戦”へと導くことになるなんて、この時は予想もしていなかった。