森・元首相の発言について

 いま、こんな記事が世の中を騒がせている。


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【「大事な時には必ず転ぶ」 森元首相、浅田選手の演技に】

 2020年東京五輪パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相は20日の福岡市での「毎日・世論フォーラム」の講演で、フィギュアスケート女子の浅田真央選手のショートプログラムでの演技について「頑張れと思って見てたら、見事にひっくり返ってしまった。あの子、大事な時には必ず転ぶんですよね。何でなんだろうなあ」と述べた。

 また、団体で日本が5位になったことについても「あれは出なければよかった。浅田さんが3回転半をすれば、ひょっとしたら3位になるかもしれないという気持ちで浅田さんを出したが、見事にひっくり返った」とも述べた。さらに「団体戦も惨敗を喫し、その傷が浅田さんに残っていたら、ものすごくかわいそうな話だ。負けるとわかっている団体戦に浅田さんを出して恥をかかせることはなかった」とも語った。

 東京五輪パラリンピックに向け、五輪選手を支援する立場の森氏の発言だけに、今後、波紋を広げそうだ。

出展:朝日新聞デジタル 2月20日(木)20時23分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140220-00000033-asahi-pol

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 森・元首相が、浅田真央選手に対してこんな発言をしたと言うのだ。
 ひたむきに頑張っている浅田選手に対する失礼な発言、しかも2020年東京五輪パラリンピック組織委員会会長である同氏の口から出た発言と言うことで、とんでもないと怒る人が続出。委員会会長の辞任を求める声も上がっている。

 自分もこの記事を見たとき、底知れぬ怒りを感じた。あれだけ努力している浅田選手に対して、どうすればそんなこと言えるのか、理解できない、と。


 ……しかし、森・元首相の発言全文を見ると、全く違った印象になるのだ。
 以下、同氏の浅田選手に対する発言全文。


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■フィギュア浅田真央選手について

今朝も真央ちゃんが最後ひっくり返った時は、4時だったと覚えておりますが。皆さんそれご覧になると、それまでずーっと真央ちゃんがまだ30番目で一番あとだったもんだから。ずーっと皆見てるわけでしょ、あれ。
ショートプログラムだから、1回何分かな。3分半くらいかな。そんなもんだったと思いますけど、それ全部やって一番最後に真央ちゃん。
なんとか頑張ってくれと思って皆見ておられたんだろうと思いますが、見事にひっくり返っちゃいましたね。あの子、大事なときには必ず転ぶんですよね。なんでなんだろうなと。

僕もソチ行って、開会式の翌日に団体戦がありましてね、あれはね、出なきゃよかったんですよ日本は。
あれは色んな種目があって、それを団体戦で。特にペアでやるアイスダンスっていうんですかね。あれ日本にできる人はいないんですね。
あのご兄弟は、アメリカに住んでおられるんだと思います確か。ハーフ。お母さんが日本人で、お父さんがアメリカ人なのかな。そのご兄弟がやっておられるから、まだオリンピックに出るだけの力量ではなかったんだということですが、日本にはいないもんですから、あの方を日本に帰化させて日本の選手団で出して、点数が全然とれなかった。

あともう皆ダメで、せめて浅田さんが出れば3回転半をすると、3回転半をする女性がいないというので、彼女が出て3回転半をすると、ひょっとすると3位になれるかもしれないという淡い気持ちでね。浅田さんを出したんですが。また見事にひっくり返っちゃいまして、結局、団体戦も惨敗を喫したという。

その傷が浅田さんに残ってたとしたら、ものすごくかわいそうな話なんですね。
団体戦負けるとわかってる、団体戦に何も浅田さんを出して、恥かかせることなかったと思うんですよね。その、転んだということが心にやっぱ残ってますから、今度自分の本番のきのうの夜はですね、昨日というか今朝の明け方は、なんとしても転んじゃいかんという気持ちが強く出てたんだと思いますね。
いい回転をされてましたけど、ちょっと勢いが強すぎたでしょうかね。ちょっと転んで手をついてしました。だからそういうふうにちょっと運が悪かったなと思って見ております。

出展:萩上チキSession-22【森喜朗 元総理・東京五輪組織委員会会長の発言 書き起し】
http://www.tbsradio.jp/ss954/2014/02/post-259.html

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 いかがだろうか。
 「見事にひっくり返っちゃった」「大事な時に必ず転ぶ」と言った事実に変わりはなく、配慮を欠いた発言だとは思うが、朝日の記事と比べると、自分の主観ではあるが、大分印象が違う。


● 朝日記事
  「大事な時に必ず転ぶ」から始まり、「今後、波紋を広げそうだ」で終わっていることから、
  森・元首相がこんな発言した! バッシングのチャンスだ! 波紋広げてやれ!
  そんな風に感じ取れる。

● 全文
  無理して団体戦に浅田選手を出して、本人にプレッシャーを与えてしまったんじゃないか。演技に焦りが出てしまっている。
  そんな風に感じ取れる。


 その原因は、朝日記事が森・元首相の言葉を「切り貼り」して記事にしていることに尽きる。
 繰り返しになるが、森・元首相の発言は、配慮が欠けたものだったと思う。しかし、その発言内容を意図的に一部分だけ取り上げて、全く違う印象を読者に植え付けるのは、いかがなものか。
 こう言った印象操作は非常に怖い。こういった記事を、真実だと鵜呑みにしてしまう人がほとんどだからだ。もっともそんな人たちも、まさかそれが「切り貼りされた記事」だとは思ってもいないだろう。


 マスコミの「中立性」「公共性」は、いったいどこに行ったのだろうか。
 こういった「印象操作」の餌食になる人たちに、いったいマスコミは何の恨みがあるのだろうか。


 日本のマスコミなら、きちんとした「真実」を報道して欲しい。それを常に思う。