エコプロダクツ2009 見学レポート

これを“観光”カテゴリーに入れるのは違っているような気がするが、まぁご了承を。


 12月11日、日本最大級の環境展示会、エコプロダクツ2009を見学した。開催場所は東京ビックサイト。
 自社の環境への取り組みを広くアピールできる舞台ということで、多くの企業が出展し、パネル展示,サンプル公開,記念品の配布などを行っていた。
 平日に行ったものの、来場者の数は想像をはるかに上回るもので、ブースによっては入場規制がかかっているものも(後に、この日の来場者数が約68000人であることを知った)。また小学生〜高校生の姿も多数あり、この展示会は、環境教育としての役割も担っていることを実感できた。しかしそれゆえ、内容が子供向けとなっている企業があり、少々物足りない感じもあった。
 それでも、企業の環境対策を質問等を通じて知ることができ、有益なものだった。


 東急とりんかい線を乗り継いで国際展示場へ。りんかい線初乗車。地下であることを初めて知った……。


 色々な企業ブースを回ったが、その中から、自分の使っているカメラの製造元、Canon,その繋がり(後述)でEPSON,また偶然目にして感心した取り組みを行っていたCASIOの順にまとめて行きたいと思う。


Canon 〜目標は商品企画から〜
 製品の排出するCO2の量は、従来は生産時にCO2を集計して把握するだけだったものを、Canonでは、商品の企画段階でCO2排出目標を設定し、開発設計段階で集計及び技術革新と改善を繰り返し、目標達成を目指すというシステムを導入した。
 Canonはこれを“豊かさアップ、環境負荷ダウン”のフレーズで“トップランナー製品”と位置付け、今年度発売のデジタルカラー複合機で初めて採用、同社の従来品より、最大50%のCO2削減を実現している。
 50%ものCO2削減は決して容易なことではなく、Canonの開発努力が伺える。削減の方法として、エコ材料の使用,物流の効率化,廃棄材料の削減,リサイクル対応,消費電力の削減が挙げられる。では、CO2削減において、どの項目が一番効力を発揮しているのだろうか。担当者に伺ってみた。
 回答は。消費電力の削減が大きいとのこと。具体的にどれが何%ということは分からないようだが、消費電力の削減が大多数を占めていることは間違いないそうだ。そしてエコ材料の使用。回収率100%のプラスチックを使用することで、その分排出量を減らしている。あとは物流の効率化。輸送に鉄道を使うと、トラックの1/7の排出量で済むほか、他の企業、CanonではEPSONと共同配送を行うことで、輸送時のCO2排出量を削減しているらしい。

 要するに、CO2を削減し易い個所というのは、使用段階におけるものということだ。これはある意味有利なことで、いくら“この製品はCO2排出量を抑えてる”とアピールしても、値段が高ければ買う人は少ないだろう。だが“省エネかつCO2排出量低減”というのは、客の購買意欲をくすぐり、客側にとっても企業側にとっても、大きなメリットとなるはずである。


 さてここで、EPSONと共同配送とはどういうことだろうか。それを述べる前に、EPSONの取り組みについても触れてみる。



EPSON 〜ステンレスではないけれど〜
 EPSONのブースで目が止まったのは、塗装工程について触れてである。
 製品を作る際、塗装という工程は極めて重要である。塗装によって製品をより美しく見せ、製品のイメージをさらに良くするためだ。そんな塗装工程だが、EPSONは、塗装をしなくてもプラスチックに艶やかな光沢感を持たせる技術を開発した。これによって塗装工程の省略が可能となり、年間1300tの塗料削減、また年間4300tのCO2削減を実現したのである。
 これは画期的な技術開発ではないだろうか。製品を作る上で、塗装と言う重要な部分をあえて省略することで、環境負荷の低減に努めているのだから。さらにそれによって見た目の美しさが損なわれることはなく、“省略できるところは省略する”という環境負荷低減の意気込みが感じられる。




CanonEPSON 〜ライバル同士で環境を考える〜
 大手家電メーカーのCanonEPSON。前述の通り、両社とも独自の取り組みで環境負荷の低減、CO2削減に努め、他社との差別化を図っている。そんなライバル関係のなか、環境について考えたとき、その関係を引きずるより、いっそ手を結んでしまった方がより効率的な環境対策を行えることがある。
 そんな両社が取り入れたのが、共同配送である。これは、両社が配送で利用している㈱日本通運の配送システムを活用することで、トラックの積載効率の向上による環境負荷の削減を目指すものである。CanonEPSONが配送データを日通に送信、日通はそのデータを集計し、両社の倉庫巡回、集荷、納品までの最適配車を決定する。ライバル家電メーカーと配送会社が行ったこの取り組みは、当初の目標を上回る従来比30%のCO2削減を実現した。
 “企業の社会的責任”というものがあるが、環境負荷の低減もそのうちの1つであり、社会的責任を果たすという面において、このように企業間で協力しているとは知らなかった。また素晴らしいとも思った。共通の目標を果たすためには、ライバルなんて関係ないのだろう。

 




       
◇ CASIO 〜企業が果たすべき責任〜
 最後にCASIOの取り組みについて触れておきたい。実は、CASIOが一番環境について考えていると思うのだ。
 そう思う理由は、“カーボンオフセット付き製品”の販売である。
 カーボンオフセットとは、それによって発生するCO2を、別の場所で実施されているCO2削減活動に協力することで相殺するというもので、現在注目を集めている。
 さて、CASIOの“カーボンオフセット付き製品”というのは、その製品を買うことにより、製品の生産,使用,廃棄によって生じるCO2を、カーボンオフセットによって全て帳消しにできるというものである。そうなると当然値段も割高になりそうだが、実はその逆で、値段は割安となっている。これはどういうことなのか。担当の方に伺ってみた。
 すると、驚くべき回答が返ってきた。まず、カーボンオフセットを行う費用は、値段に上乗せをするのではなく、全てCASIOが負担するというのである。生産によって生じるCO2に対してカーボンオフセットを行うのは分かるが、我々が使用することによって生じるCO2も、CASIOの負担でカーボンオフセットを行ってくれるのだ。そして値段に関しては、製品の箱やカートリッジをCASIOに返却することを条件に、製品の価格を落としていると言うのである。返却されたものは再利用,リサイクルされるため、廃棄物ゼロが実現するらしい。資源を有効活用すると同時に、我々のコスト軽減にも貢献しているのだ。

 さらに伺ってみた。それで収益的には大丈夫なのかと。対する回答に、また驚いた。収益云々ではなく、環境負荷を低減することは、我々の果たすべき責任、使命であり、当然のことである、と。この言葉に、関心を通り越して感動してしまった。ここまで環境のことを考えている企業を、他に見たことがない。正直に凄いと思った。
 製品の箱やカートリッジは無料で回収しており、客側に負担は無い。ただ、やはり面倒で回収に協力しないという客もいるようで、これでは廃棄物ゼロを実現することができなくなってしまう。そこでCASIOは回収率100%を達成するため、思い切ったことをしている。これだ。

 廃棄される物を、自社の所有物であることをアピールしているのだ。“所有権を有します”。思い切った表記である。CASIOには驚かされてばかりだが、ここまで環境負荷低減に力を入れているのには本当に頭が下がる思いである。




 このエコプロダクツを見学し、企業が行うライフサイクル、環境への取り組みを知ることができた。どこも画期的な方法を取っているが、個人的にはCASIOの取り組みがとても気に入った。地球の資源は有限であり、今後企業における環境負荷の低減が、ますます必要になるはずである。企業の果たす責任もそうだが、我々客側も、回収協力やこまめな節電など、最大限それに協力しなければならないだろう。



 帰りは高速バスでゆったり帰宅。

 エコプロダクツ、実際行ってみると面白いですよ。記念品を配布しているところが多数あるので、是非行かれてみてはいかがでしょうか?(次は来年だけど……)